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きせつのないまち
季節のない街
山本 周五郎
「朝日新聞 夕刊」1962(昭和37)年4月1日~10月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 201,379 字 · 394 页
は、大事業に発展していて手が出せない、大資本で吸収しようにも、あまりに発展しすぎているので、つい二の足を踏んでしまう、という種類のものなんだ」
「みていたまえばんくん、こんどはぼくも当ててみせるよ」春彦は拳で胸を叩こうとして、思い返したようにそれを中止して云った、「そしてきみにも、いよいよ活躍してもらう時期が来るだろうと思うね」
ばんくんの鼻翼がちぢまり、そしてもしも彼が犬だったとすればの話だが、尻尾を両股のあいだへ巻き込むように感じられた。これを一言で云えば、おそれをなした、というふうにみえたのだ。
土川春彦は二日ばかり、いつもより長く外出した。例の株屋街へでかけたものか、それとも新事業のために奔走しているのか、ばんくんには見当もつかなかったが、またばんくんとしては見当をつけようなどともしなかったろう。この、もっともかぼちゃらしいところの七代目は、むしろちょろが事業などをしないこと、仮に始めたとしたら失敗することを祈ったに相違ないのである。
ちょろの八丁頭脳はなにを思いついたか、彼は市電の北の終点へいって、川魚の問屋をしらべ、生きた鮒と鯉の卸し値や、その供給状態を慥かめた。