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どんぐり

寺田寅彦随筆集 第一巻

寺田 寅彦

寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第一巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:どんぐり、科学者と芸術家、旅日記から、竜舌蘭、花物語、芝刈り、球根、簔虫と蜘蛛、ねずみと猫、物理学と感覚、先生への通信、病院の夜明けの物音、病室の花、丸善と三越、自画像、春寒、春六題、田園雑感、写生紀行、笑い、案内者、断水の日。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 203,161 字 · 412 页

青空文庫

ある者は根もとまでつめて刈り込まないと承知しないし、またある者はある長さの緑を残すように骨を折っているらしく見えた。

書斎で聞いていると時々鋏の音が聞こえたが、その音のぐあいでだれがやっているかはたいていわかった。

午前に私が刈り初めようとするとよく来客があった。そういう事が三四回もつづいた。来客を呼ぶおまじないだと言って笑うものもあった。これは無論直接の因果関係ではなかったが、しかし全くの偶然でもなかった。二つの事がらを制約する共通な条件はあった。ただその条件が必至のものでないだけの事であった。

毎日少しずつ鋏を使いながら少しずついろいろの事を考えた。いろいろの考えはどこから出て来るかわからなかった。前の考えとあとの考えとの関係もわからなかった。昔ミダス王の理髪師がささやいた秘密を蘆の葉が再びささやいたように、今この芝の葉の一つ一つが、昔だれかに聞いた事を今私にささやいているのかもしれない。

たとえば私は自分で芝を刈る事によって、植木屋の賃銀を奪っているのではないかという問題に出会った。そしていろいろもて扱っているうちに、これがもうかなりに古いありふれた問題である事に気がついた。