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どんぐり
寺田寅彦随筆集 第一巻
寺田 寅彦
寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第一巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:どんぐり、科学者と芸術家、旅日記から、竜舌蘭、花物語、芝刈り、球根、簔虫と蜘蛛、ねずみと猫、物理学と感覚、先生への通信、病院の夜明けの物音、病室の花、丸善と三越、自画像、春寒、春六題、田園雑感、写生紀行、笑い、案内者、断水の日。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 203,161 字 · 412 页
それかと言ってこれに対する明快な解決はやはり得られなかった。
延び過ぎた芝の根もとが腐れかかっているのを見た時に、私はふと単純な言葉の上の連想から、あまりに栄え茂りすぎた物質的文化のために人間生活の根本が腐れかかるのではないかと思ってみた。そしてそれを救うにはなんとかして少しこの文明を刈り込む必要がありはしないかと考えた。しかし芝と文化とはなんの関係もない。芝を刈るのがいいといっても文明を刈り取るがいいという証拠にも何もならない事は明らかであった。あまりに皮相的な軽率な類推の危険な事を今さらのように思ってみたりした。実際そんな単純な考えが熱狂的な少数の人の口から群集の間に燎原の火のようにひろがって、「芝」を根もとまで焼き払おうとした例が西洋の歴史などにないでもなかった。文明の葉は刈るわけにも焼くわけにも行かない。
始めのうちはおもしろがっていた子供らもじきに飽きてしまってだれも鋏を手にするものはなくなった。ただ長女と私とが時々少しずつ刈って行った。そのうちには雨が降ったりして休む日もあるので、いちばん始めに刈った所はもうかなりに新しい芽を延ばして来た。