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どんぐり

寺田寅彦随筆集 第一巻

寺田 寅彦

寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第一巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:どんぐり、科学者と芸術家、旅日記から、竜舌蘭、花物語、芝刈り、球根、簔虫と蜘蛛、ねずみと猫、物理学と感覚、先生への通信、病院の夜明けの物音、病室の花、丸善と三越、自画像、春寒、春六題、田園雑感、写生紀行、笑い、案内者、断水の日。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 203,161 字 · 412 页

青空文庫

夏も盛りになって、夕方になると皆が庭へ出た。三毛もきっとついて来た。かつてのら猫の遊び場所であったつつじの根もとの少しくぼんだ所は、何かしらやはりどの猫にも気に入ると見えて、ボールを追っかけたりして駆け回る途中で、きまったようにそこへ駆け込んだ。そして餌をねらう猛獣のような姿勢をして抜き足で出て来て、いよいよ飛びかかる前には腰を左右に振り立てるのである。どうかすると熊笹の中に隠れて長い間じっとしていると思うと、急に鯉のはね上がるように高くとび出して、そしてキョトンとしてとぼけた顔をしている事もある。どうかすると四つ足を両方に開いて腹をぴったり芝生につけて、ちょうどももんがあの翔っているような格好をしている事もあった。たぶん腹でも冷やしているのではないかと思われた。

芝を刈っているといつのまにか忍んで来て不意に鋏のさきに飛びかかるのが危険でしようがなかった。注意しながら刈っていると、時々、猫がねらっている事を警告する子供の叫び声が聞かれた。この芝刈り鋏に対する猫の好奇心のようなものはずっと後までも持続した。もう紐切れやボールなどにはじゃれなくなった後でも、鋏を持って庭におりて行く私の姿を見るとすぐについて来るのであった。