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どんぐり

寺田寅彦随筆集 第一巻

寺田 寅彦

寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第一巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:どんぐり、科学者と芸術家、旅日記から、竜舌蘭、花物語、芝刈り、球根、簔虫と蜘蛛、ねずみと猫、物理学と感覚、先生への通信、病院の夜明けの物音、病室の花、丸善と三越、自画像、春寒、春六題、田園雑感、写生紀行、笑い、案内者、断水の日。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 203,161 字 · 412 页

青空文庫

そしてだれかちょっとさわりでもすると、背中の毛を逆立てて、そうして恐ろしいうなり声を立てた。ウーウーという真に物すごいような、とてもこの小さな子猫の声とは思われないような声を出すのである。そしてそこらじゅうにある食物をできるだけ多く占有するように両の前足の指をできるだけ開いてしっかりおさえつける。この点では彼はキャピタリストである。押しのけられた三毛はあきれたように少し離れてながめていた。鯖の血合の一切れでもやるとそれをくわえるが早いか、だれもさわりもしないのに例のうなり声を出しながらすぐにそこを逃げ出そうとするのである。どうしてもどろぼう猫の性質としか思われないものをもっているようである。その上にこの猫はいわゆる下性が悪かった。毎夜のように座ぶとんや夜具のすそをよごすのであった。その始末をしなければならない台所の人たちの間にははやくにたまに対する排斥の声が高まった。そうでない人でも物を食う時のたまの挙動をあさましく不愉快に感じないものはなかった。ことにおとなしい三毛が彼のために食物を奪われたりするのを見ればなおさらであった。

たまを連れて来た牛乳屋の責任問題も起こっていた。