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どんぐり
寺田寅彦随筆集 第一巻
寺田 寅彦
寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第一巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:どんぐり、科学者と芸術家、旅日記から、竜舌蘭、花物語、芝刈り、球根、簔虫と蜘蛛、ねずみと猫、物理学と感覚、先生への通信、病院の夜明けの物音、病室の花、丸善と三越、自画像、春寒、春六題、田園雑感、写生紀行、笑い、案内者、断水の日。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 203,161 字 · 412 页
もっともマッハのごときは感覚以外に実在はないと論じているが、彼のいわゆる感覚の世界は普通吾人のいう外界の別名と考えればここに述べる所とはあえて矛盾しない。
外界の事物の存在を吾人が感ずるのは前述べたとおり直接間接に吾人の五感の助けによるものである。これらの官能が刺激されたために生ずる個々の知覚が記憶によって連絡されるとこれが一つの経験になる。このような経験が幾回も幾回も繰り返されている間にそこに漠然とした知識が生じて来る。この原始的な知識がさらに経験によってだんだんに吟味され取捨されて個人的一時的からだんだんに普遍的なものに進化して来るとこれが科学の基礎となる事実というものになるのである。
しかるにあらゆる経験の第一の源となる人間の五感がどれほど鋭敏でまた確実であるかという事はぜひとも考えてみなければならぬ。
人間の肉眼が細かいものを判別しうる範囲はおおよそどれくらいかというとまず一ミリの数十分の一以上のものである、最強度な顕微鏡の力を借りてもその数千分の一以下に下げる事はできぬ(もっとも細かいものの見える見えぬはその物の光度と周囲の光度との差によりまた大きさよりはむしろ視角によるが)。