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どんぐり
寺田寅彦随筆集 第一巻
寺田 寅彦
寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第一巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:どんぐり、科学者と芸術家、旅日記から、竜舌蘭、花物語、芝刈り、球根、簔虫と蜘蛛、ねずみと猫、物理学と感覚、先生への通信、病院の夜明けの物音、病室の花、丸善と三越、自画像、春寒、春六題、田園雑感、写生紀行、笑い、案内者、断水の日。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 203,161 字 · 412 页
同じ種類の花でありながら培養の方法や周囲の状況の相違でこれほどにもちがったものができるかと思った。土の性質、肥料や水の供給、それから光線や温度の関係で同じ種から貴族と平民が生まれるのであった。花の貴族と平民とは物を言わないから争闘はない。こんな事を考えたりした。
次にはO君から浅い大きな鉢にいろいろの草花を寄せ植えにしたのを届けてくれた。中心になっているのはやはりベコニアで、その周囲には緑色の紗の片々と思うようなアスパラガスの葉が四方に広がり、その下から燃えるようなゼラニウムがのぞき、低い所にはアルヘイ糖のように蟹シャボの花がいくつか鉢の縁にたれ下がっていた。一つ一つの花はきれいであるがこのように人工的に寄せ集めたところになんとなく物足りない不自然さがあった。しかしともかくもにぎやかに花やかなものであった。眠られぬ夜中の数時間はこの花のためにもどれほどか短くされた。眠られぬままにいろいろな事を考えた中にも、N先生が病気重態という報知を受けて見舞いに行った時の事を思い出した。あの時に江戸川の大曲の花屋へ寄って求めたのがやはりベコニアであった。紙で包んだ花鉢をだいじにぶら下げて車にも乗らず早稲田まで持って行った。