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どんぐり
寺田寅彦随筆集 第一巻
寺田 寅彦
寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第一巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:どんぐり、科学者と芸術家、旅日記から、竜舌蘭、花物語、芝刈り、球根、簔虫と蜘蛛、ねずみと猫、物理学と感覚、先生への通信、病院の夜明けの物音、病室の花、丸善と三越、自画像、春寒、春六題、田園雑感、写生紀行、笑い、案内者、断水の日。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 203,161 字 · 412 页
漱石先生の「趣味の遺伝」はまさにこういう点に触れたもののようにも思われる。ラフカディオ・ハーンの書いたものの中にもこのような考えが論じてあった。われわれの祖先を千年前にさかのぼると、今の自分というのはその昔の二千万人の血を受け継いでいる勘定だそうである。そうしてみると自分が毎日こしらえているいろいろの顔は、この二千万人のだれかの顔に相当するかもしれない。こんな事を考えておかしくも思ったが、同時に「自分」というものの成り立ちをこういう立場から、もう一度よく考えてみなければならないと思った。なんだか独立な自分というものは微塵に崩壊してしまって、ただ無数の過去の精霊が五体の細胞と血球の中にうごめいているという事になりそうであった。
この第三号の自画像はまずどうにか、こうにか仕上げてしまった。ほんとうの意味ではいつまでかかっても「仕上がる」見込みのない事がわかって来たから、ここらでまず一段落ついた事にしてしばらく放置してみる事にした。バックに緑色の布のかかった箪笥があって、その上に書物や新聞の雑然と置いてあるのがいかにもうるさくて絵全体を俗悪にしてしまうから、あとからすっかり塗りつぶしてそのかわりに暗緑色の幕をたれたようなぐあいに直してみた。