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どんぐり
寺田寅彦随筆集 第一巻
寺田 寅彦
寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第一巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:どんぐり、科学者と芸術家、旅日記から、竜舌蘭、花物語、芝刈り、球根、簔虫と蜘蛛、ねずみと猫、物理学と感覚、先生への通信、病院の夜明けの物音、病室の花、丸善と三越、自画像、春寒、春六題、田園雑感、写生紀行、笑い、案内者、断水の日。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 203,161 字 · 412 页
しかしそれをやるときっと手が堅くなっていじけて、失敗する場合が多い。進歩という事にさえかまわなければ手をつけないでそのままに安んじておくほうがいわゆる処生の方法とも暗合して安全であるかもしれない。
それで自画像第四号もとうとう仕上げずにやめてしまった。第三号は第一号のように意地の悪い顔であったがこの第四号は第二号のように温厚らしくできた。二重人格者の甲乙の性格が交代で現われるような気がした。
今度は横顔でもやってみようと思って鏡を二つ出して真横から輪郭を写してみたら実に意外な顔であった。第一鼻が思っていたよりもずっと高くいかにも憎々しいように突き出ていて、額がそげて顋がこけて、おまけに後頭部が飛び出していてなんとも言われない妙な顔であった、どこかロベスピールに似ているような気がした。とにかく正面の自分と横顔の自分を結びつけるのがちょっと困難に思われた。かつて写真屋のアルバムで知らぬ人の顔について同じような経験をした事はあったが、生まれて四十余年来自分の肩の上についている顔についてこんな経験をしようとは思わなかった。
これから思うと刑事巡査が正面の写真によって罪人を物色するような場合には、目前にいる横顔の当人を平気で見のがすプロバビリティもかなりにありそうだと思った。