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どんぐり
寺田寅彦随筆集 第一巻
寺田 寅彦
寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第一巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:どんぐり、科学者と芸術家、旅日記から、竜舌蘭、花物語、芝刈り、球根、簔虫と蜘蛛、ねずみと猫、物理学と感覚、先生への通信、病院の夜明けの物音、病室の花、丸善と三越、自画像、春寒、春六題、田園雑感、写生紀行、笑い、案内者、断水の日。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 203,161 字 · 412 页
いわゆる原っぱへ出ると、南を向いた丘の斜面の草原には秋草もあれば桜の紅葉もあったが、どうもちょうどぐあいのいい所をここだと思い切りにくいので、とうとうその原っぱを通り越して往還路へおりてしまった。道ばたにはところどころに赤く立ち枯れになった黍の畑が、暗い森を背景にして、さまざまの手ごろな小品を見せていた。しかしもう少しいい所をと思って歩いているうちに、とうとうぐるりと一回りして元の公園の入り口へ出てしまった。
入り口の向こう側に妙な細工もののような庭園があった。その中に建てた妙な屋台造りに生き人形が並べてあった。鞍馬山で牛若丸が天狗と剣術をやっているのがあった。その人形の色彩から何からがなんとも言えない陰惨なものである。この小屋の上にそびえた美しい老杉までがそのために物すごく恐ろしく無気味なものに感ぜられた。なんのためにわざわざこんなものが作ってあるのか全くわからない。
秋の日がだんだん低く落ちて行った。あまりゆるゆるしていては、せっかくここまで来たのに一枚もかかずに帰る事になりそうなので、行き当たり次第に並み木道を左へ切れていって、そこの甘藷畑の中の小高い所にともかくも腰をかけて絵の具箱をあけた。