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どんぐり

寺田寅彦随筆集 第一巻

寺田 寅彦

寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第一巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:どんぐり、科学者と芸術家、旅日記から、竜舌蘭、花物語、芝刈り、球根、簔虫と蜘蛛、ねずみと猫、物理学と感覚、先生への通信、病院の夜明けの物音、病室の花、丸善と三越、自画像、春寒、春六題、田園雑感、写生紀行、笑い、案内者、断水の日。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 203,161 字 · 412 页

青空文庫

その向こうは一段低くなっていると見えて柿のこずえの下にある家の藁葺屋根だけが地面にのっかっているように見えていた。ここで画架を立てて二時間余りを無心に過ごした。

崖をおりて停車場のほうへ行く道ばたには清らかな小流れが音を立てて流れていた。小川の岸に茂るいろいろの灌木はみんなさまざまの秋の色彩に染められていた。小川と丘との間の一帯の地に、別荘らしい家がところどころに建っている。後ろには森を背負い、門前の小川には小橋がかかっている、なんとなしに閑寂な趣のあるいい土地だと思う。しかしこの小川の流れが衛生のほうから少し気になる点もあると思った。

電車は小学校の遠足のかえりでいっぱいであった。よんどころなく車掌台に立って外を見ていると、ある切り通しの崖の上に建てた立派な家のひさしが無残に暴風にこわされてそのままになっているのが目についた。液体力学の教えるところではこういう崖の角は風力が無限大になって圧力のうんと下がろうとする所である。液体力学を持ち出すまでもなく、こういう所へ家を建てるのは考えものである。しかしあるいは家のほうが先に建っていたので切り通しのほうがあとにできたかもしれない。