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どんぐり
寺田寅彦随筆集 第一巻
寺田 寅彦
寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第一巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:どんぐり、科学者と芸術家、旅日記から、竜舌蘭、花物語、芝刈り、球根、簔虫と蜘蛛、ねずみと猫、物理学と感覚、先生への通信、病院の夜明けの物音、病室の花、丸善と三越、自画像、春寒、春六題、田園雑感、写生紀行、笑い、案内者、断水の日。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 203,161 字 · 412 页
そばにすわっている両親の手前も気の毒千万であった。それでなるべく我慢しようと思って、くちびるを強くかんだり、こっそりひざをつねったりするが、目から涙は出てもこの「理由なき笑い」はなかなかそれぐらいの事では止まらなかった。そのような努力の結果はかえって防ごうとする感じを強めるような効果があった。ところが医者のほうは案外いつも平気でいっしょに笑ってくれたりする。そうすると、もう手離しで笑ってもいいという安心を感じると同時に、笑いたい感覚はすうと一時に消滅してしまうのである。
胸部の皮膚にさわられるのが直接にくすぐったい感覚を起こさせるので、それが原因かと思われない事もないが、実はそうではなくて、それよりはむしろ息を吸い込もうとする努力と密接な関係のある事が自分でよくわかる。腹部をもんだりする時には実際かえってそう笑いたくならなかった。
かかりつけの医者に診てもらう場合には、それほど困らなかったが、始めての医者などだと、もう見てもらう前からこれが苦になっていた。気にすればするほどかえって結果は悪かった。そばに母でもいてこの癖をなるべく早く説明してもらうよりほかはなかった。