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どんぐり
寺田寅彦随筆集 第一巻
寺田 寅彦
寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第一巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:どんぐり、科学者と芸術家、旅日記から、竜舌蘭、花物語、芝刈り、球根、簔虫と蜘蛛、ねずみと猫、物理学と感覚、先生への通信、病院の夜明けの物音、病室の花、丸善と三越、自画像、春寒、春六題、田園雑感、写生紀行、笑い、案内者、断水の日。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 203,161 字 · 412 页
日当たりのいい山腹にはところどころに葡萄畑がある。そして道ばたにマドンナを祭るらしい小祠はなんとなく地蔵様や馬頭観世音のような、しかしもう少し人間くさい優しみのある趣のものであった。西洋でもこんなものがあるかと思ってたのもしいような気もした。山腹から谷を見おろすと、緑の野にまっ白な道路が真一文字に開かれて、その両側には新緑の並み木が規則正しく並んでいるのが、いかにも整然と片付いた感じを与えるのであった。
オーストリア人で、日本へ遊びに行った帰りだという童顔白髪の男と話す。富士屋ホテルの案内記のような小冊子をカバンから出して見せたりした。隣席のドイツ人も話しかけて、これから通過する鉄路のループの説明をしてくれたりした。山の腹の中でトンネルが大きな輪を描いていて、汽車は今はいった穴の真上へ出て来るのである。T氏が特に興味をもって根ほり葉ほり聞いていたら、そのループのプランをかいた図面をくれてよこした。
だんだん山が険しくなって、峰ははげた岩ばかりになり、谷間の樅やレルヘンの木もまばらになり、懸崖のそこかしこには不滅の雪が小氷河になって凍った滝のようにたれ下がっていた。