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えいがじだい

寺田寅彦随筆集 第二巻

寺田 寅彦

寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第二巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:映画時代、子猫、解かれた象、相対性原理側面観、怪異考、比較言語学における統計的研究法の可能性について、化け物の進化、ルクレチウスと科学、蓄音機、亮の追憶、一つの思考実験、電車の混雑について、浮世絵の曲線、二十四年前、伊吹山の句について、池、路傍の草、備忘録、日本楽器の名称、Liber Studiorum、時事雑感。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 207,099 字 · 419 页

青空文庫

ていた。耳にさした管を両手でおさえて首をたれて熱心に聞いている花客を見おろすようにして、口の内で器械の音曲をささやいている主人は狐の毛皮の帽子をかぶったりしていた。彼はともかくも周囲のあらゆる露店の主人に比べては一頭地を抜いた文明の宣伝者ででもあるように思われた。

私は大道の蓄音機を聞いてみたいという希望をかなり強くもっていたにかかわらず、とうとう一度も聞く事ができなかった。私の知っている範囲の友だちや市民でこの蓄音機の管を耳にはさんでいるのを見かけた事もなかった。聞いているのはほとんど皆田舎の田舎から出て来たらしい最も文明と縁の遠い人たちであった。

大道で蓄音機を聞くという事がたいして悪い事とは思われない。りんごをかじりながら街頭をあるくよりも、環視の中でメリーゴーラウンドに乗るよりもむしろいい事かもしれないのに、何かしらそれを引き止める心理作用があって私の勇気を沮喪させるのであった。そのためにこの文明の利器に親炙する好機会をみすみす取り逃がしつつ、そんなこだわりなしにおもしろそうに聞いている田舎の人たちをうらやまなければならなかった。このような「薄志弱行」