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えいがじだい

寺田寅彦随筆集 第二巻

寺田 寅彦

寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第二巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:映画時代、子猫、解かれた象、相対性原理側面観、怪異考、比較言語学における統計的研究法の可能性について、化け物の進化、ルクレチウスと科学、蓄音機、亮の追憶、一つの思考実験、電車の混雑について、浮世絵の曲線、二十四年前、伊吹山の句について、池、路傍の草、備忘録、日本楽器の名称、Liber Studiorum、時事雑感。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 207,099 字 · 419 页

青空文庫

ルクレチウスと科学

緒言

今からもう十余年も前のことである。私はだれかの物理学史を読んでいるうちに、耶蘇紀元前一世紀のころローマの詩人哲学者ルクレチウス(紀元前九八―五四)が、暗室にさし入る日光の中に舞踊する微塵の混乱状態を例示して物質元子(1)の無秩序運動を説明したという記事に逢着して驚嘆の念に打たれたことがあった。実に天下に新しき何物もないという諺を思い出すと同時に、また地上には古い何物もないということを痛切に感じさせられたのであった。

その後に私は友人安倍能成君の「西洋哲学史」を読んで、ロイキッポス、デモクリトス、エピクロスを経てルクレチウスに伝わった元子論の梗概や、その説の哲学的の意義、他学派に対する関係等について多少の概念を得る事ができた、と同時にこの元子説に対する科学者としての強い興味を刺激された。しかしてこの説の内容についてもう少し詳しい知識を得たいという希望をもっていたが、われわれのような職業科学者にとっては、読まなければならない新しい専門的の書物があまりに多いために、どうも二千年前の物理学を復習する暇がないような気がして、ついついそのままになっていたのである。