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えいがじだい
寺田寅彦随筆集 第二巻
寺田 寅彦
寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第二巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:映画時代、子猫、解かれた象、相対性原理側面観、怪異考、比較言語学における統計的研究法の可能性について、化け物の進化、ルクレチウスと科学、蓄音機、亮の追憶、一つの思考実験、電車の混雑について、浮世絵の曲線、二十四年前、伊吹山の句について、池、路傍の草、備忘録、日本楽器の名称、Liber Studiorum、時事雑感。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 207,099 字 · 419 页
たしか右の眉尻の上に真紅な血ぼくろのようなものがあって、それを傷つけると血が止めどもなく流れ出た。そんな思い出が、どういうものか、私にはまたなくなつかしいものである。
亮の存在が、私の頭の中で著しく鮮明になって来たのは、私が国の中学校を出て高等学校に入学し、年々の暑中休暇に帰省した時分からである。
片田舎の中学生で、さきざき高等学校から大学に進もうという志望をいだいているものにとっては、暑中休暇に帰省している先輩の言動はかなり影響のあるものである。そういうような影響もあるいはあったろうが、暑中休暇の間はほとんど毎日のように私のうちに往来した。当時どんな事が二人の話題に上ったかは思い出せないが、いずれ人生とか、運命とか、あるいは文学とか、芸術とか、そういう種類の事がおもなものであったらしい。当時若々しい希望に満ちて理想のほか何物も眼中になかった叔父と、そろそろ家庭以外の世界に目をあけかかった感受性に富んだ甥との間には、夢のような美しい空想の国が広がっていた事であろう。
つまりどこか気が合っていたものと見える。南国の炎天に写生帳をさげて、よくいっしょに水彩画をかきに出かけたりした。