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えいがじだい
寺田寅彦随筆集 第二巻
寺田 寅彦
寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第二巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:映画時代、子猫、解かれた象、相対性原理側面観、怪異考、比較言語学における統計的研究法の可能性について、化け物の進化、ルクレチウスと科学、蓄音機、亮の追憶、一つの思考実験、電車の混雑について、浮世絵の曲線、二十四年前、伊吹山の句について、池、路傍の草、備忘録、日本楽器の名称、Liber Studiorum、時事雑感。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 207,099 字 · 419 页
ほんとうに突っ込んでかきたいと思っても、ついめんどうでいいかげんにごまかしてしまうのが残念だというような事を手紙の端に書いてあったりした。そのころのスケッチ帳に亮の妻が亮の寝顔を写生したのがあるが、よく似ていて、そしてやつれはてているのがさびしい。去年の春から悪くなって、五月に某病院に入院するとまもなくなくなった。臨終は平穏であった。みんなに看護の礼を言って暇ごいをして、自分の死後妻には自由を与えてやってくれと遺言して、静かに息を引きとったそうである。
急を聞いて国へ帰っていた亮の弟からその時の詳しい様子を聞いた時に、私はなんだかほっとしたような心持ちがした。ほとんど予期されていた亮の最後が、それほど安らかで静かで美しいものであったと知った時には、思わず「それはよかった」といったような不倫な言葉が自然に口から出た。そうしてそのあとから水のにじみ出るようなさびしさが襲って来るのであった。
散るべくしてわずかに散らないでいた桐の一葉が、風のない静かな夕べにおのずから枝を離れて落ちたような心持ちがした。自分の魂の一部分がもろく欠け落ちて永久に見失われたというような心持ちもした。