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えいがじだい
寺田寅彦随筆集 第二巻
寺田 寅彦
寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第二巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:映画時代、子猫、解かれた象、相対性原理側面観、怪異考、比較言語学における統計的研究法の可能性について、化け物の進化、ルクレチウスと科学、蓄音機、亮の追憶、一つの思考実験、電車の混雑について、浮世絵の曲線、二十四年前、伊吹山の句について、池、路傍の草、備忘録、日本楽器の名称、Liber Studiorum、時事雑感。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 207,099 字 · 419 页
ただ思い出の国の国境に近く住むような人たちの事だけが比較的やすらかな記録の資料となりうるようである。
自分の過去帳に載せらるべくしてまだ載せられてないものには三匹の飼い猫がある。不思議な事には追懐の国におけるこれらの家畜は人間と少しも変わらないものになってしまっている。口もきけば物もいう。こちらの心もそのままによく通ずる。そうして死んだ人間の追憶には美しさの中にも何かしら多少の苦みを伴なわない事はまれであるのに、これらの家畜の思い出にはいささかも苦々しさのあと味がない。それはやはり彼らが生きている間に物を言わなかったためであろう。
猫の死
「玉」は黄色に褐色の虎斑をもった雄猫であった。粗野にして滑稽なる相貌をもち、遅鈍にして大食であり、あらゆるデリカシーというものを完全に欠如した性格であった。従って家内じゅうのだれにも格別に愛せられなかった。小さい時分は一家じゅうの寵児である「三毛」の遊戯の相手としての「道化師」として存在の意義を認められていたのが、三毛も玉も年を取って、もうそう活発な遊戯を演ずる事がなくなってからは、彼は全く用のない冗員として取り扱われていた。