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しょうしょうしげもとのはは

少将滋幹の母

谷崎 潤一郎

「毎日新聞」毎日新聞社、1949(昭和24)年11月16日~1950(昭和25)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 83,234 字 · 160 页

青空文庫

「いや、先程も申しました通り、お逢いしたのは一二度でございますので、たしかなことは申せませんけれども、すぐれてめでたい御器量であられることは、先ずほんとうでございますな」

と、まだ平中は何となく胡麻化しながら、少しずつ出し惜しみをするように云った。

「ふうん、さては世間の噂に違わず………」

「こうなりましたら隠さず申し上げますが、あれだけの顔だちのお方は、ちょっと外に見当らない、と申しても宜しゅうございましょうな。憚りながら、わたくしが今までにお逢いしました人々のうちでは、あの北の方が一番お美しゅういらっしゃいます」

「ふうん」

と、時平は呻るように云って息を詰めた。

「で、あなたの見たところ、夫婦仲はどんな工合です。矢張老人との間は巧く行っていないのでしょうね」

「さあ、身の不仕合わせを歎くようなことを申されて、涙ぐんでおられたこともございましたが、大納言殿は世にも親切なお人で、非常に大切にしてくれる、などゝも仰っしゃっておられました。さればどう云うお心持でおられますか、実際のところは分りかねます、何しろ可愛い若君もおいでになりますし、………」

「子達は何人おられるのです」