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あきかぜとはは

尾崎士郎短篇集

尾崎 士郎

尾崎士郎『尾崎士郎短篇集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:秋風と母、運命について、河鹿、菎蒻、三等郵便局、十三夜、鶺鴒の巣、滝について、叛骨・中野正剛、蜜柑の皮。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 108,032 字 · 216 页

青空文庫

月の出はおそく、満天の星が夜空にきらめいているのも心のひきしまる思いであった。夜中になって、バスの轍の音が高く門にちかづいてきた。衛兵が、一人一人下りるのを待って仔細に身体検査を行っている。みんなシャツ一枚で、荷物を持っているものは一人もいなかった。聞いてみると、パラワン島で漁をやってかえってきた沖縄県の人たちだそうである。彼等はマニラへ着いたとたんに逮捕され、荷物は船ぐるみ水産局で没収され、着のみ着のまま刑務所へ連行されたのが急に夜おそく収容所へ移送されてきたのである。私は応急の処置として、独断で握り飯の残っている分を配給したが、すでに三百五十名の予定であった人数が五百十人になって、約百名あまりの人たちは室内にも入り切れず、テントの中からもはみだして、やっと毛布だけをひっかぶって芝生の上に寝ている始末だから、シャツ一枚で顫えている人たちの寝るべき場所は何処にもなかった。みんな身体をくっつけて芝生の上にしゃがんでいる。夜あけ方になって夥しい馬蹄の音が南から北へ、――マニラの市内へ、市内へと繰り込んで来た。二十分ちかくもつづいたであろうか。騎兵隊の移動らしい。