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あきかぜとはは

尾崎士郎短篇集

尾崎 士郎

尾崎士郎『尾崎士郎短篇集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:秋風と母、運命について、河鹿、菎蒻、三等郵便局、十三夜、鶺鴒の巣、滝について、叛骨・中野正剛、蜜柑の皮。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 108,032 字 · 216 页

青空文庫

人生に脅かされる理由が無いと同じように彼もまた人生を脅かす必要がないのだ。春が秋になり、冬が夏になるのと同じようにこの老人の前にはあらゆるものが永遠の循環をやっているのだ。だが、しかし、この不思議な瞬間のために私は最早隣室の相場師について考える必要がなくなったのである。何故かといって、――彼の新調の洋服を着て出ていった相場師のためにどうして私が自分を不幸にしなければならないのか? 私の心は今こそ彼がふたたびこの四階の部屋に帰って来ないことを望みたい気持で一ぱいになっているではないか。彼の憂鬱な顔が以前と同じように毎朝、細目にあけた扉口から亡霊のように私の部屋の中を覗き込む。そして、不幸な不幸な身の上ばなしを聞きながら、私もまた彼と同じようにセンチメンタルにならなければならない。――そして夜は、うす気味悪い未来の不幸に怯えながら、古い壁を隔てて永遠にうかびあがることのできない人間のうめき声を聴かなければならない。その重苦しい夜の長い時間は私の前から消え去ろうとしているのだ。私は自分の運命に一つの変化を期待し、新しい空想の道がひらかれてくるという感じに牽き入れられた。