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ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)
山の憶い出 上
木暮 理太郎
木暮理太郎『山の憶い出 上』。同一底本的分册已合并为一书。收入:笛吹川の上流(東沢と西沢)、奥秩父の山旅日記、釜沢行、秩父の奥山、利根川水源地の山々、秋の鬼怒沼 、美ヶ原、木曽駒と甲斐駒、黒部川奥の山旅、黒部川を遡る 、針木峠の林道 、春の大方山、三国山と苗場山、八ヶ峰の断裂 。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 284,014 字 · 565 页
恐らく三千年来の謎であった埃及のスフィンクスが、其体内に埋蔵していた殿堂や、其頭上に穿たれた大きな孔の何であるかを解かれたのを最後として、世に謎の種は尽きたのではあるまいか。少くとも自分はわが秩父奥山を床しい謎として其儘保存して置いた方が幸福であったかも知れぬ。そう思うと自分は鉄砲虫のように山に喰い入って、殆んど完膚無きまでに解剖し批評し叙述し描写しなければ満足することの出来ない人間の欲望を呪い度なる。それにしても人は自然の前に出ると、誰しも悪戯盛りの子供のようになるものと見える。如何なる秘密の玉手箱も開けて見ぬ内は虫が納らない。黙々として而も偉大なる山は、この我儘を可愛さに堪えぬ慈母の眼をもって眺めて居るのであろう。
秩父に対する自分の概念というようなものが変ったと同じ様に、秩父其物も亦変りつつあるのは如何にも惜しい。十八、九年前に自分が初めて十文字峠を通った時には、昼も頭の上が暗い程に樹は茂っていたが路はよかった。其後通る度に路は荒れて反て木立が透いて来た。何々組林業事務所などいう嫌な札が路傍に建てられてあるのを見るようになった。炭焼竈の烟が一年は一年よりも数多く且山深く進んで行く。