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ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)
山の憶い出 上
木暮 理太郎
木暮理太郎『山の憶い出 上』。同一底本的分册已合并为一书。收入:笛吹川の上流(東沢と西沢)、奥秩父の山旅日記、釜沢行、秩父の奥山、利根川水源地の山々、秋の鬼怒沼 、美ヶ原、木曽駒と甲斐駒、黒部川奥の山旅、黒部川を遡る 、針木峠の林道 、春の大方山、三国山と苗場山、八ヶ峰の断裂 。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 284,014 字 · 565 页
高さは三宝山に劣るが、根張りの大きいことは優っている。甲武信岳は此二山の中間に位置して、高さも木賊山よりは高く三宝山よりは低い、而も二千四百七十二、三米を下ることはあるまいと思う。此三山は遠望した所に拠ると、三宝山の北の斜面と木賊山の東南の斜面とが割合に長く、中央の甲武信が小さいので、宛然一座の大山が三の巓を駢峙した形となる。此特徴は著しく目に立つので、容易に他と識別することが出来る。去年(大正二年)槍ヶ岳に登って殺生小屋に泊った翌日、朝早く小屋の前に立って、視界の開けた東南の空に、一様に紫紺の大波をうねらせた山々の形を、覚束なき記憶の中から物色して、独り喜んでいた時、ふと蓼科山の横岳の額を掠めて、それかと思われるほのかな線の閃きに、怪しく胸は跳るのであったが、槍の肩まで登って振り返ると、果してそこに此三山の姿が現われていたのは嬉しかった。東京市内からも雲取山と白岩山との間に此等の山を望み得ることは、『山岳』九年一号の雑録に書いた通りである。
への字形に排列した此三山は、体から言えば、希臘神話に現れている地獄の怪犬ケルベロスのように一身三頭である。