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ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)

山の憶い出 上

木暮 理太郎

木暮理太郎『山の憶い出 上』。同一底本的分册已合并为一书。收入:笛吹川の上流(東沢と西沢)、奥秩父の山旅日記、釜沢行、秩父の奥山、利根川水源地の山々、秋の鬼怒沼 、美ヶ原、木曽駒と甲斐駒、黒部川奥の山旅、黒部川を遡る 、針木峠の林道 、春の大方山、三国山と苗場山、八ヶ峰の断裂 。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 284,014 字 · 565 页

青空文庫

私は北アルプスの中で鷲羽岳だけを未蹈の山として残すのが心懸りであったが、これも是非ない。

朝食後、昼飯は途中水のある所で炊くことにして、午前七時半に野営地を後にした。空は曇って霧深く、南東の風が吹いていた。眺望がないので足の進みも早い。赤岳から東沢の源頭をめぐる赭色の崩れ安い山稜は、初めて此処を縦走した人には、悪場であったろうが、今はそれ程のこともない。十時四十分野口五郎岳の頂上。「七月十九日午前十時、此頂上を通過す」と、針木方面から縦走して来た河東(碧梧桐)長谷川(如是閖)一戸(直蔵)三氏の署名した標木があった。頂上の北寄りには、誰か知らぬが小屋掛けして、画家が滞在していた。人夫であろう、一人の男が出て来て、雷鳥は居なかったかと聞く、いたよと答えたら、引返して鉄砲を持って跳んで行った、皆が憎がる。午後一時三十分、三ツ岳寄りの平らな草地に雪解の水がだぶだぶ流れているのを幸に飯を炊いて昼食にした。二時十分出発。三ツ岳の南の峰で左側を搦んだ為に道を誤り、東沢に派出した尾根を下った。あまり下り方が激しいので疑わしくなり、引返して霧のはれ間を待っていると、一時間許りでいい工合に一度サッと霽れて、方向が見定められた。