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ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)
山の憶い出 上
木暮 理太郎
木暮理太郎『山の憶い出 上』。同一底本的分册已合并为一书。收入:笛吹川の上流(東沢と西沢)、奥秩父の山旅日記、釜沢行、秩父の奥山、利根川水源地の山々、秋の鬼怒沼 、美ヶ原、木曽駒と甲斐駒、黒部川奥の山旅、黒部川を遡る 、針木峠の林道 、春の大方山、三国山と苗場山、八ヶ峰の断裂 。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 284,014 字 · 565 页
私達の目的は初めから平まで遡上することにきめてある。今更案内者からこんな相談を受けようとは思わなかった。しかし朧気ながらこの事あるを予期しないこともなかったのである。これから奥へ進むには、是非とも右岸に渡らなければならない。それには仙人谷の出合に近い河の中の巨岩に橋を架けて之に移り、岩の上を足溜りとして、更に其橋を引いて対岸へ渡すのである。これは気骨の折れる上に、可なり危い仕事であるにきまっている。何時間を要するか見当もつかない。私は緊張した重苦しい気持で架橋の説明を聞きながら、滝津瀬をなして奔流する河の中に横たわった大岩を見詰めたまま、斯様な際にいつも長次郎から聞く「なに、案じはねえ」というような頼母しい声のかかるのを空しく、実に空しく待っていたのであるから。
それは然しもうどうでもよかった。一行の糧食は辛うじて三日を支え得るに過ぎない。これから上流の遡行は、今迄の経過から推して、二日や三日で容易に為し遂げられるものでないことが判明したし、況して斯様な旅に何より大切な人夫の和を得ていないことから考えて、此儘行進を続ける気には如何してもなれなかった。