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かれがころしたか
彼が殺したか
浜尾 四郎
「新青年」1929(昭和4)年1~2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 41,336 字 · 83 页
唯、一、二の新聞は、道子の実家川上家を訪れ、川上未亡人に会った由を伝えましたが、道子の醜行はさる事ながら、金の為に娘を犠牲にした母親も、今更らしく非難の的となったわけなのです。
扠、私が事件を頼まれた時は既に申した通り検事の起訴後で、事件は予審に繋属していたのです。御承知でしょうが此の時分には、被告人に接見する事は禁止されて居りましたし、検事も予審判事も事件の内容に就ては、勿論何も語っては呉れませんので、私自身も世人同様、ただ外部から探りを入れる外事実を知り得よう手段は何もなかったのです。従ってその時まで、此の事件に就ての知識は新聞紙に依って得たばかりでした。尤もそれから私は出来るだけ活動はして見ました。例えば友田に会う事は出来たのですが、彼から知り得た事はまず第一に小田夫妻の平常で、之は世上の噂通り極めて冷く見えたそうです。道子の事に就て、友田は道子との特別の交際に関しては絶対に事実無根であると主張し、殊に当夜道子とひそかに話をした等という事は全く新聞の書いた偽りであると申して居りました。けれども、道子が大寺同様友田とも可なり親しくつき合っていた事は事実らしく、之は友田も必ずしも否定しませんでした。