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かれがころしたか
彼が殺したか
浜尾 四郎
「新青年」1929(昭和4)年1~2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 41,336 字 · 83 页
二
ただ此の二人は結婚する迄、殆ど互に知らぬ人々だったのでした。つまり此の結婚は、純粋に我が国旧来の見合結婚だったのです。道子の性質を知って居る人々が驚いたのは無理もありません。あのようなモダーンな女が、どうしてそんな結婚をしたのか、全く人々には意外でした。道子と交際して相当自信をもって居た人々の失望は云うまでもありません。
斯ういう多くの人々の驚きの中に、然し両家は着々と此の縁談を進め、軈て間もなく此処に若い一対の立派な夫婦が出来上ったわけなのです。
道子を知って居た人々の中には、あれは真の道子の意志ではあるまい、案外有るように見えて無いのが金だから、或いは道子は、家の犠牲となって資産家の所へ嫁したのだろうというものもありました。之はあながち根拠の無い説ではありますまい。殊に聡明な女は可成りそういう事を考えるものですから。
二
結婚後一年程は何の噂も立ちませんでした。而て小田夫妻は極めて平穏に、平和に暮して居るように見えました。ただ道子が不相変若い男達と交際して居た事は、或る人達の眉を顰めさせて居たのです。
一年程経ちますと、清三はひどい肋膜炎を患って、半年程臥床するようになりましたが、その後は、殆どK町に退いてそこに召使を相手の静かな夫婦生活をするようになったのです。