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かれがころしたか

彼が殺したか

浜尾 四郎

「新青年」1929(昭和4)年1~2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 41,336 字 · 83 页

青空文庫

俺は其の時から、悪魔に虐げられて居る彼女の為に立とうと決心した。どんな事があっても彼女の為に戦ってやろうと思った。俺は全く彼女の奴隷であった。おお愚かな俺は!

清三が、道子に対して、自由な行動をとらして居るのは、決して本心から喜んで居るわけではないのだ。道子が俺などと交際することの為にも、清三は道子を可なり苦しめることがあったそうだ。そうとすれば清三にだって嫉妬心はあるのだ。ただ彼の冷たい自尊心の為に、はっきりと道子には云わないのだ。こうわかった以上、俺も道子と同じ行動をとろうとした。わざわざ清三が不愉快になるような話を彼の前でした。わざわざ清三を不愉快にして愉快がった。斯の如くにして、昨年の春から俺は、はっきりと清三に不愉快なようすを見せられつつ、彼と屡々会ったのであった。

八月の十六日! あの呪わしい日、あの日にも此の様子は十分見えたのである。

友田という男に対して、道子がどういう態度をとって居たかという事を、俺はよくは知らない。然し、清三が、俺よりも友田に、より多く親しさを見せて居たことから思えば、彼は俺ほど道子に近づいては居なかったのではなかろうか。