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かれがころしたか

彼が殺したか

浜尾 四郎

「新青年」1929(昭和4)年1~2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 41,336 字 · 83 页

青空文庫

而も外の三人はまだ中々聴牌しない。殊に清三は此の有様を見て、親の事だから頻りに焦って、和りをいそいで居るらしいのだが、之もまだ容易に聴牌したようすはなく、おまけに彼は道子の上に居るので索字を握って放さぬから、尚更、和りがむずかしくなって居る。その中、道子の自摸の番となった。彼女は十四枚の牌を全部立てたまま並べて居たが、暫く考えて居た結果、いきなり七索を一枚すてて来た。

「余ったな」

清三は半ばほんとに恐れたようで、半ばは、他の二人に注意するような様子でつぶやいた。

友田を経て俺の番になった。幸か不幸か、求め難い辺三索をつかんで来たので、今や孤立せる八索一個を捨てれば、一四七筒の絶好の平和の聴牌である。

通常の場合でも、七索をすてて聴牌したらしい際、八索を打つ事は危険である。況んや清一色で而も門前清の手と来ているから、一般の和りの原則は容易に適用出来ぬ。今俺が握っている八索は絶対危険牌と見なければならない。

然し相手は愛する道子である。親は憎むべき清三である。而も自分は三つの機会ある聴牌なのだ。よしやって見ろと思いながらいきなり八索を打ったところ、はたして道子を清一色で和らせてしまった。