轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

わすれのこりのき

忘れ残りの記

吉川 英治

吉川英治『忘れ残りの記』。同一底本的分册已合并为一书。收入:忘れ残りの記、年譜。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,050 字 · 383 页

青空文庫

だから使い走りでも個人の用足しでも、何でもして、償いをつけていた。

雨の日は、船内仕事か、外部にしても、ドックの底の真っ暗な船底のサビ落しなど、比較的らくな作業が多かった。

そんな日、ハッチからダンブルへ入って、足場板に腰かけ、蝋燭の光で、かんかんハンマーで内部の鉄板を叩いている仕事はのんきであった。監督が来る時だけやっていればいい仕事のようにみんな怠けあっていた。ぼくはいつもポケットにしている袖珍本の芭蕉句集を出して盗み読みした。また、作句したり自由な空想に愉しみ耽けることができる。

船艙も石炭庫だと、無数の小ハンマーの響きで、暗い上にも更に粉炭の闇が濛々と厚くなった。空気がチリチリ燃え、手元の蝋燭の焔に、のべつ微塵のような火花が咲く。それと音響とで、一種不思議な幻覚の世界が感じられるのだ。かさかさな鼻腔の奥を鳴らしてカッと痰をすれば、石炭を溶かしたようなものが口から出るし、うっかり蝋燭の火で煙草をつけようとすると、(ぼくは十五、六から喫煙癖にそまっていた)顔じゅうにたかッている粉炭へチリッと燃えつきそうになる。

それでもなお、ダンブル仕事は、よかった。