轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
わすれのこりのき
忘れ残りの記
吉川 英治
吉川英治『忘れ残りの記』。同一底本的分册已合并为一书。收入:忘れ残りの記、年譜。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,050 字 · 383 页
六区で銘酒屋を出していた母の姉妹の一人も、すでに世に亡い人だろう。美人だったという娘のお和歌さんもどうしたか。そのお和歌さんには、伯父の斎藤恒太郎の長男の勤が、従兄妹でもあるのに、熱中して、通ったとかいう話も当時小耳にしている。文学士斎藤勤には、「中世における陰陽学と卜筮の研究」の一著がある。それだけで、大学を出てまもなく夭折してしまった。
すこし話はとぶが、父は大正七年の三月、浜町三丁目の新居で亡くなった。料亭“喜文”の裏門の真向いで、うなぎの寝床みたいな細長い家の奥の間だった。
亡くなる一週間ほど前、父は母へむかって「英のやつ、あんなで、いいのかなあ。……あれでやって行けるかしら」と、ぼくの前途を、沁々心配していたという。
潰瘍症状も、喘息も、慢性なので、かかりつけの医師も何ら警告はしていなかった。唯二、三日前から、呼吸困難をつげていたので、大森の海岸附近にでも、閑静な家を見つけて、療養したら、と母もいうし、医師も同意なので、友人と共に、心当りの転地先を見つけに行った。
そして、帰って来たら、もう昏睡状態におちており、明日まで、どうかと、医師も首をかしげていた。