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わすれのこりのき

忘れ残りの記

吉川 英治

吉川英治『忘れ残りの記』。同一底本的分册已合并为一书。收入:忘れ残りの記、年譜。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,050 字 · 383 页

青空文庫

あとがき

ぼくとしては、これまで書いた十代から二十代まででも、充分愉しかった。いまの青年たちの日々と較べても、悔ゆる思いは湧いて来ない。といって、自分の子や周囲の子弟に、ぼくの過程をひきあいに出して定規に当てようなんていう時代知らずでもないつもりだ。

けれど、過去の親たちが歩いた泥ンこな道にも、振返れば、これからの子が、ぬかるみを歩く用意の足しになるぐらいなものはあろう。ぼくの父は、予期してではあるまいが、偶然、子のぼくをして、ぬかるみを少し歩かせ過ぎてくれたようだ。といっても、父の死までのぼくの体験なども、やっと人生中学の門を卒業して出た程度にすぎない。以上はぼくの人生中学の通信簿といったところだ。父は怖かったが、怖かった父とか先生というものは又、妙に、後ではなつかしく、そして、有難かったりするものである。

あとがき

なぜか、私はよく訊かれる。「あなたは髪を染めていらっしゃるので?」と人みなが問うのである。飛んでもない。私は日常髪を洗うことさえしない不精者だ。けれど考えてみると、私も間もなく古稀といわれる年齢になるらしい。人が疑うのは当然だった。――にもかかわらず気持ちにおいては、この「四半自叙伝」