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うらみなきさつじん
恨なき殺人
宮島 資夫
「新日本」1917(大正6)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,611 字 · 56 页
「もう長いことはあるまい、その中に打ち壊れる時が来るだろう」と思ったが、すぐその後から自分で進んで壊すことも出来ないのかと思うと、自分の無力と卑怯を、悲しんだり嘲笑ったりする気も起っていた。
夕暗が、この高い峰の上まで襲って来るようになってから、彼は見張りに下って行くのであった。
見張りの中には、山番が灯してくれるランプが一つ、薄暗く光っていた。外の暗が硝子を通して押し寄せるので、ランプの光りは何となく淋し気だった。時々、坑内から起るハッパの轟きと、鉱山歌を謳いながら掘子が押して来るトロッコの響きが絶えると、高山の夜は恐ろしいほど静かになった。
彼はランプの下に腰をかけてジッとして、夜更けまで空しく考え込んでいることがあった。
盆の賞与を貰うと、事務員はみんな交替で東京へ遊びに行った。けれども彼は行こうとも思わなかった。東京に行けば、再び此処へ帰って来る気はなくなるだろう。と言って、東京にも別に自分の生活を新らしくさせてくれるものがあるとは思えなかった。三日に一度位ずつ村に帰ると、池田は下の茶屋に行って泥のように酔っ払ってから、事務所へ帰って蚊帳の中へもぐり込んだ。