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うらみなきさつじん

恨なき殺人

宮島 資夫

「新日本」1917(大正6)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,611 字 · 56 页

青空文庫

半年猟に出て、半年は女郎屋で暮すんだ。駆逐艦より少し速力の早い船が一艘あれば、大丈夫だ。どうかして二人でもう一度北海道へ行こうや」と言った。この前池田が山を止すと言った時にも、

「人殺しをすりゃすぐ捕るような陸の上じゃ何処へ行ったって同じことよ。まあもう少し我慢して、千島へでも行ってみろ、日露戦争の時脱営したまんまの奴もいりゃ、人殺しをして逃げて来た奴もいら。茶屋の亭主をしている奴だって何か曰くのある奴ばかりだ。奴等はみんな無籍者だから生きたって死んだって解りゃしないんだ。喧嘩して人殺しをする奴があったって下らない蔭で仕事をする奴なんかありゃしない。なんでもかんでも妙にちゃんとしちまった陸の上は何処へ行ったって同じこった。お前がいなくなると話の相手もなくなってしまうんだ、もう少し我慢しろよ」

何時かしら池田も、いつかは千島に行きたいと思うようになった。法律もなければ警察もない世界では、人が人を殺して平気でいることがあるかも知れない。けれども殺すものは、殺し損えば殺されるのだ。それだけの覚悟さえあれば、何をしたって差支えのない事だ。殺すほどの気になってから、人は人の生命が大切になるんだ。