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おしみなくあいはうばう

惜みなく愛は奪う

有島 武郎

「有島武郎著作集 第一輯」叢文閣、1920(大正9)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 79,397 字 · 159 页

青空文庫

これらの外面的な情実から、家族は国家の柱石、資本主義の根拠地となっている。その為めには、縦令愛の失われた男女の間にも、家族たる形体を固守せしめる必要がある。それ故に家族の分散は社会が最も忌み嫌うところのものである。

おしなべての男女もまた、社会のこの不言不語の強圧に対して柔順である。彼等の多数は愛のない所にその形骸だけを続ける。男性はこの習慣に依頼して自己の強権を保護され、女性はまたこの制度の庇護によってその生存を保障される。そしてかくの如き空虚な集団生活の必然的な結果として、愛なき所に多数の子女が生産される。そして彼等は親の保護を必要とする現在の社会にあって(私は親の保護を必要としない社会を予想しているが故にかくいうのだ)親の愛なくして育たねばならぬ。そして又一方には、縦令愛する男女でも、家族を形造るべき財産がないために、結婚の形式を取らずに結婚すれば、その子は私生児として生涯隣保の擯斥を受けねばならぬ。

社会からいったならば、かかる欠陥は縦令必然的に起って来るとしても、なお家族制度を固執することに多分の便利が認められよう。然し個性の要求及びその完成から考える時、それはいかに不自然な結果を生ずるであろうよ。