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おしみなくあいはうばう
惜みなく愛は奪う
有島 武郎
「有島武郎著作集 第一輯」叢文閣、1920(大正9)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 79,397 字 · 159 页
二一
そしてその必死の努力が同時に、その船の安全を希わせ、船中にあって彼と協力すべき人々の安全を希わせるだろう。各員の間には言わず語らずの中に、完全な共同作業が行われるだろう、この同じ心持で人類が常に生きていたら。少くとも事なき時に、私達がこの心持を蔑ろにすることがなかったならば。
×
習性的生活はその所産を自己の上に積み上げる。智的生活はその所産を自己の中に貯える。本能的生活は常にその所産を捨てて飛躍する。
二一
私は澱みに来た、そして暫く渦紋を描いた。
私は再び流れ出よう。
私はまず愛を出発点として芸術を考えて見る。
凡ての思想凡ての行為は表象である。
表象とは愛が己れ自ら表現するための煩悶である。その煩悶の結果が即ち創造である。芸術は創造だ。故に凡ての人は多少の意味に於て芸術家であらねばならぬ。若し謂うところの芸術家のみが創造を司り、他はこれに与らないものだとするなら、どうして芸術品が一般の人に訴えることが出来よう。芸術家と然らざる人との間に愛の断層があるならば、芸術家の表現的努力は畢竟無益ではないか。
一人の水夫があって檣の上から落日の大観を擅まにし得た時、この感激を人に伝え得るよう表現する能力がなかったならば、その人は詩人とはいえない、とある技巧派の文学者はいった。