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おしみなくあいはうばう

惜みなく愛は奪う

有島 武郎

「有島武郎著作集 第一輯」叢文閣、1920(大正9)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 79,397 字 · 159 页

青空文庫

だから少し綿密な観察者は、智と情との間に、情と意志との間に、又意志と智との間に、判然とはその何れにも従わせることの出来ない幾多の心的活動を発見するだろう。虹彩を検する時、赤と青と黄との間に無限数の間色を発見するのと同一だ。赤青黄は元来白によって統一さるべき仮象であるからである。かくて私達が太陽の光線そのものを見窮めようとする時、分解された諸色をいかに研究しても、それから光線そのものの特質の全体を知悉することが出来ぬと同様に、智情意の現象を如何に科学的に探究しても、心的活動そのものを掴むことは思いもよらない。帰納法は記述にのみ役立つ。然し本体の表現には役立たない。この簡単な原理は屡※(二の字点、1-2-22)閑却される。科学に、従って科学的研究に絶大の価値をおこうとする現代にあっては、帰納法の根本的欠陥は往々無反省に閑却される。

さて私は岐路に迷い込もうとしたようだ。私は再び私の当面の問題に帰って行こう。

外界の刺戟をそのまま受け入れる生活を仮りに習性的生活(habitual life)と呼ぶ。それは石の生活と同様の生活だ。石は外界の刺戟なしには永久に一所にあって、永い間の中にただ滅して行く。