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おしみなくあいはうばう
惜みなく愛は奪う
有島 武郎
「有島武郎著作集 第一輯」叢文閣、1920(大正9)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 79,397 字 · 159 页
私は知らない。然し人は自然界の中にこの衝動の仮りの姿を認めることが出来ないだろうか。
地球が造られた始めにはそこに痕跡すら有機物は存在しなかった。そこに、或る時期に至って有機物が現われ出た。それは或る科学者が想像するように他の星体から隕石に混入して地表に齎されたとしても、少くとも有機物の存在に不適当だった地球は、いつの間にかその発達にすら適合するように変化していたのだ。有機物の発生に次いで単細胞の生物が現われ出た。そして生長と分化とが始まった。その姿は無機物の結晶に起る成長らしい現象とは多くの点に於て相違していた。単細胞生物はやがて複細胞生物となり、一は地上に固着して植物となり、一は移動性を利用して動物となった。そして動物の中から人類が発生するまでに、その進化の過程には屡創造と称せらるべき現象が続出した。続出したというよりも凡ての過程は創造から創造への連続といっていい。習性及び形態の保存に固着してカリバンのように固有の生活にしがみ附こうとする生物を或る神秘な力が鞭ちつつ、分化から分化へと飛躍させて来た。誰がこの否む可らざる目前の事実に驚異せずにはいられよう。