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おしみなくあいはうばう
惜みなく愛は奪う
有島 武郎
「有島武郎著作集 第一輯」叢文閣、1920(大正9)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 79,397 字 · 159 页
肉にまで押し進んでも更に悔いと憎しみとを醸さない恋こそは真の恋である。その恋の姿は比べるものなく美しい。私は又本能的生活の素朴に近い現われを、無邪気な小児の熱中した遊戯の中に見出すことが出来ると思う。彼は正しく時間からも外聞からも超越する。彼には遊戯そのものの外に何等の目的もない。彼の表面的な目的は縦令一個の紙箱を造ることにありとするも、その製作に熱中している瞬間には、紙箱を造る手段そのものの中に目的は吸い込まれてしまう。そこには何等の努力も義務も附帯してはいない。あの純一無雑な生命の流露を見守っていると私は涙がにじみ出るほど羨ましい。私の生活がああいう態度によって導かれる瞬間が偶にあったならば私は甫めて真の創造を成就することが出来るであろうものを。
私は本能的生活の記述を蔑ろにして、あまり多くをその讃美の為めに空費したろうか。私は仮りにそれを許してもらいたい。何故なら、私は本能的生活を智的生活の上位に置こうと思うからだ。誰でも私のいう智的生活を習性的生活の上におかぬものはなかろう。然し本能的生活を智的生活の上におこうとする場合になると、多くの人々はそこに躊躇を感じはしないだろうか。