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おしみなくあいはうばう

惜みなく愛は奪う

有島 武郎

「有島武郎著作集 第一輯」叢文閣、1920(大正9)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 79,397 字 · 159 页

青空文庫

然しその推定は根柢的に的をはずれた悲しむべき誤謬なのだ。私がその小鳥を愛すれば愛する程、小鳥はより多く私に摂取されて、私の生活と不可避的に同化してしまうのだ。唯いつまでも分離して見えるのは、その外面的な形態の関係だけである。小鳥のしば鳴きに、私は小鳥と共に或は喜び或は悲しむ。その時喜びなり悲しみなりは小鳥のものであると共に、私にとっては私自身のものだ。私が小鳥を愛すれば愛するほど、小鳥はより多く私そのものである。私にとっては小鳥はもう私以外の存在ではない。小鳥ではない。小鳥は私だ。私が小鳥を活きるのだ。(The little bird is myself, and I live a bird)“I live a bird”……英語にはこの適切な愛の発想法がある。若しこの表現をうなずく人があったら、その人は確かに私の意味しようとするところをうなずいてくれるだろう。私は小鳥を生きるのだ。だから私は美しい籠と、新鮮な食餌と、やむ時なき愛撫とを外物に恵み与えた覚えはない。私は明かにそれらのものを私自身に与えているのだ。私は小鳥とその所有物の凡てを残すところなく外界から私の個性へ奪い取っているのだ。