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わがやのらくえん
我が家の楽園
久生 十蘭
「オール読物」1953(昭和28)年1月〜6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 90,195 字 · 175 页
「それで、どうしてくれというんだね?」
ヘンリ清水は額を叩いて、
「これはどうも……聞いちゃいなかったんですか? 洋館をお貸しねがうといっても、シュラーのことで、お気づかいをかけるつもりは、毛頭、ございませんので、さっそく、明日からでも、腕っこきのハウス・メードを一人住込みさせます……それで、お家賃のほうですが、階上と階下をつっくるみにして、週二十ドルというところでおさまっていただきたい……シュラーが日本へ来るのは、七月四日の独立記念日の前後だと思いますが、ご承諾ねがわれますれば、本日、すなわち五月十五日からお借りしたことにして、五、六、七と、十週間分の家賃を前払いいたしますが、いかがでしょう」
今を去る二十何年前、石田氏がアメリカの大学にいたとき、同学の合衆国美人を見染め、すんでのことに、青い目の黄色い息子か、髪の黒い白っ子の娘を生むところだった。
千々子さまとシュラーの関係にたいするヘンリ清水のうちあけ話は、石田氏にとっても、感慨無量なものがあったらしい。二十何年目に、賢夫人に復讐されたと考えたかどうか、それはともかく、なるほど親子は似るものだと、つくづく思い知らされたわけで、ぐっともいえないふうだった。