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わがやのらくえん
我が家の楽園
久生 十蘭
「オール読物」1953(昭和28)年1月〜6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 90,195 字 · 175 页
それはまァいいが、あそこの床脇の棚は、醍醐の三宝院の古いものをそっくり持ってきたので、国宝ぐらいのねうちのあるものだった。それが跡形もなくなって、言語道断な不潔な場所に改変されている……ドアが開いているから、君のところからも見えるだろう。あの物件は、なんだと思うね? 私は、いくらか外国を見て来たから知っているが、あれはビデェというもんですぜ。婦人の洗滌器です……改変といっても、こんな無茶なやりかたは、あるもんじゃない」
「よく、わかりました……どこから手をつけるのもおなじことだから、この部屋からはじめましょう。どの程度の原状回復を、お望みですか」
「原状は建築名鑑にあるから、それに準じて、そっくり、もとのとおりにしていただきたい……いま、われわれの居るところは、広廊の面から七寸高くなっていて、縁に鶴丸の小紋を散らした備後畳が敷いてあった。それも、もとのようにしていただく」
そんなことをいっているとき、さっきの労働服を着たアメリカ軍が五人ばかり、前後になって入ってきた。
「パードン」といって、みなを立たせると、マークでもしてあるのか、椅子もソファもひっくり返して裏をしらべ、片っ端から運びだしにかかった。