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わがやのらくえん
我が家の楽園
久生 十蘭
「オール読物」1953(昭和28)年1月〜6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 90,195 字 · 175 页
緑は、青林檎の緑という独得の緑で、桃色は、アフリカ鷺の胸毛の桃色という、ふしぎな桃色である。
遠くから見ると、一見まぎれもないアメリカの居住だが、それは建物の上っ面になすった塗料だけのことで、その下に、封建の最盛時に建てあげた古い御所造りの屋台と、高慢な明治の洋館の骨格がひそんでいることに、気のつくものはない。
アメリカ風の見掛けさえしていれば、どんな家にも、かならずリテリティ・ファースト(実利第一)の、快適なアメリカン・ライフがあると考えるのは浅見である。百々子は、甘い夫婦を見捨てて、急な坂をおりだしたが、みょうに気持がこじれてきて、その二人に、
「失礼ですが、あの家には、アメリカン・コモンウェルスといったようなものは、ひとつもありません。いま、なにかおっしゃっていたようだけど、それは見当ちがいというものですよ」
と、いってやりたくてムズムズした。
甘い夫婦連れは、見せかけの派手な色彩に眩惑され、あの家のなかに、どんなすばらしい生活があるのだろうと、勝手な想像をしていたが、麻布の家における、わが石田家の日常は、渋谷のバラック生活の伝統をそのままひきついだ、なんの変哲もないものだった。