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わがやのらくえん
我が家の楽園
久生 十蘭
「オール読物」1953(昭和28)年1月〜6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 90,195 字 · 175 页
二
「お嬢さん、火事を最初に発見したのは、あなたですね。どういう動機で?」
「火事の夢を見て、びっくりして眼をさましたら、ほんとうの火事だったの……こんな幼稚なの、動機になるかしら?」
「あなたが発火を認めた。そのとき、あなたのお父さまは、どこにいました」
「ケチンのそばの洋間に……あたしが駆けて行って、ノックをして、火事だといったんです」
「すぐ、起きていらした?」
「五分ほどしてから、ドアの隙間から顔をだしました」
二
アメリカの借家人がケチンに使っていたところは、江戸時代には中門脇の中間部屋だったのを、石田氏の養父の代に、洋館のほうへ繰込んで坊主畳を敷き、院外団の壮士や、青雲の志のある同郷の書生どもを入込みにして、ゴロッチャラさせていたのだそうである。ただし、それは大正末期までのことでかくいう百々子などの知っている頃は、昼間から鼠の眷属が跳梁する、使用不能の空き部屋になっていた。
半地下式の食料庫のほうは、江戸時代には、大根部屋といわれていたところで、冬の間、野菜を囲っておく場所だったが、祖父の代に、地埋みの部分の板壁に、モルタルを塗って電灯を引きこみ、西洋のカーヴ(地下室の酒倉)式の部屋をこしらえた。