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わがあいするしじんのでんき

我が愛する詩人の伝記

室生 犀星

北原白秋「婦人公論 第四十三巻第一号」1958(昭和33)年1月号<br>高村光太郎「婦人公論 第四十三巻第二号」1958(昭和33)年2月号<br>萩原朔太郎「婦人公論 第四十三巻第三号」1958(昭和33)年3月号<br>釈迢空「婦人公論 第四十三巻第四号」1958(昭和33)年4月号<br>堀辰雄「婦人公論 第四十三巻第七号」1958(昭和33)年7月号<br>立原道造「婦人公論 第四十三巻第八号」1958(昭和33)年8月号<br>津村信夫「婦人公論 第四十三巻第九号」1958(昭和33)年9月号<br>山村暮鳥「婦人公論 第四十三巻第十一号」1958(昭和33)年10月号<br>百田宗治「婦人公論 第四十三巻第十二号」1958(昭和33)年11月号<br>千家元麿「婦人公論 第四十三巻第十三号」1958(昭和33)年12月号<br>島崎藤村「婦人公論 第四十三巻第六号」1958(昭和33)年6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 116,728 字 · 231 页

青空文庫

ないし、父の城を陥落させることも並々のわざでないので、たのむのは兄貴だけだと言った。信夫はしかし困難な名門のごたごたしたところを破ることも、この少女を貰うことではすでに心が決まっていて、大して父母の城なぞは頭に置いていない、頭に置いていることはこの次ぎの土曜日には何処で逢って、どういう事を話そうかということ、どういうふうに彼女の美しさに触れるかという二つのことがらだけであった。

私はこういう問題ではかんたんに、突きこんで言うことをしなかった。

「離れで逢えばいいじゃないか、連れて来て一日寝ころんで話をすれば、何もほかの処にいるような遠慮もいらない。」

「仕事のお邪魔になりませんか。」

「離れできみたちが逢って居れば、僕にあぶらをさしてくれるようなものだ。」

「あぶらですか、あはは、あぶらは好いですね、じゃ、連れて来てもいいんですね。」

「構うものか、ここには邪魔者はいない。」

「それほどの美人じゃないから、期待しないで下さい、あなたは期待しすぎるんだ。」

信夫は一つの警戒を彼女のためにそういい、自分の大せつな人を他人に見せてやるという大きい愉快もあった。実際、自分の愛人を友人とか先輩に見せるということには、よくよくの信頼のある人でないと、そうは、したくないものであった。