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わがあいするしじんのでんき
我が愛する詩人の伝記
室生 犀星
北原白秋「婦人公論 第四十三巻第一号」1958(昭和33)年1月号<br>高村光太郎「婦人公論 第四十三巻第二号」1958(昭和33)年2月号<br>萩原朔太郎「婦人公論 第四十三巻第三号」1958(昭和33)年3月号<br>釈迢空「婦人公論 第四十三巻第四号」1958(昭和33)年4月号<br>堀辰雄「婦人公論 第四十三巻第七号」1958(昭和33)年7月号<br>立原道造「婦人公論 第四十三巻第八号」1958(昭和33)年8月号<br>津村信夫「婦人公論 第四十三巻第九号」1958(昭和33)年9月号<br>山村暮鳥「婦人公論 第四十三巻第十一号」1958(昭和33)年10月号<br>百田宗治「婦人公論 第四十三巻第十二号」1958(昭和33)年11月号<br>千家元麿「婦人公論 第四十三巻第十三号」1958(昭和33)年12月号<br>島崎藤村「婦人公論 第四十三巻第六号」1958(昭和33)年6月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 116,728 字 · 231 页
と言ってくれた。併し暮鳥がこの年の暮れようとしている東京に、何の用事があったのだろうかという疑いを私は必然に持った。寝具に客用なぞのない貧乏暮らしの私は、近くの貸しふとん屋から一人前の寝具を借り入れ、雑用の金を作るために質屋に衣類を持って行き、暮鳥の知らない間にそれらの用意を整えていた。三十日も暮れ、三十一日になり正月元旦になっても、暮鳥は悠然と帰郷するふうもなかった。その間に『詩歌』の前田夕暮を訪ねて行き、新潮社に翻訳『ドストエフスキイの書簡』の原稿を持って行った。その翻訳の売り込みが大事な上京原因であったらしい。とにかく家庭を持ちすでに結婚しているのであり、家を空けるということに、よくよくの事情があるらしく、事情は私に判っている気がしても、それを聞き糾すというほどの親睦さもないし、暮鳥はそれら家庭の事には一さい口を割らなかった。ただ、君が不自由しているのに泊り込んで済まないと低い声でいい、これは同人費でもあるが更めて同人費は送ってもよいからと、彼は参円ばかりの金を或る朝食後に差し出して、下宿料の方に廻してくれというのであった。当時、この百姓家の離れの六畳は、電灯代を入れてたった七円五拾銭であり、私は下宿料その他で一文も、借金を作っていなかった。