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わがあいするしじんのでんき
我が愛する詩人の伝記
室生 犀星
北原白秋「婦人公論 第四十三巻第一号」1958(昭和33)年1月号<br>高村光太郎「婦人公論 第四十三巻第二号」1958(昭和33)年2月号<br>萩原朔太郎「婦人公論 第四十三巻第三号」1958(昭和33)年3月号<br>釈迢空「婦人公論 第四十三巻第四号」1958(昭和33)年4月号<br>堀辰雄「婦人公論 第四十三巻第七号」1958(昭和33)年7月号<br>立原道造「婦人公論 第四十三巻第八号」1958(昭和33)年8月号<br>津村信夫「婦人公論 第四十三巻第九号」1958(昭和33)年9月号<br>山村暮鳥「婦人公論 第四十三巻第十一号」1958(昭和33)年10月号<br>百田宗治「婦人公論 第四十三巻第十二号」1958(昭和33)年11月号<br>千家元麿「婦人公論 第四十三巻第十三号」1958(昭和33)年12月号<br>島崎藤村「婦人公論 第四十三巻第六号」1958(昭和33)年6月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 116,728 字 · 231 页
彼はマントを着ていたように覚えているが、うろ覚えかも判らない、どうも百田宗治はいつもマントをふうわりと着ている男におもえてならないのである。と、いうことはマントがよく似合う紳士だという意味かも判らぬ。百田とはよく共通の宴会などで行きあうと、私もそうであるが、百田はいつも会場の入口で私を待っていてくれた。冬の晩の宴会が多かったらしく、百田は例の黒のマントを着ていた。そして二人はわずかばかりの酒を街の中で、きゅうくつな宴会のつぐないにして愉しく愛飲したものである。
一個の方舟
各々一対の生物をでなく――今日あらゆる無数の獣類、鳥類、虫類を入れ、
ある選ばれたる種族のうちの幾人をでなく――一切の人間、盗賊をも殺人者をも内にしたノアの方舟、
宇宙をさまよふ一個の方舟!
いかなる国より
いかなる国よりこし人ぞ
あえかにも
わが前に来たまひし。
いかなる国より
こし人ぞ
わがふところに
眠りたまひぬ。
君わが名を呼ぶ
黄昏となれば
君、わが名を呼ぶ、
かれらかく在るを不思議とて。 (後略)
山茶花
庭の樹々のうへを、
しろい山茶花の花々のうへを
しづかにかげつてゆく陽がある。
――しづかに失はれてゆく希望がある。