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わがあいするしじんのでんき
我が愛する詩人の伝記
室生 犀星
北原白秋「婦人公論 第四十三巻第一号」1958(昭和33)年1月号<br>高村光太郎「婦人公論 第四十三巻第二号」1958(昭和33)年2月号<br>萩原朔太郎「婦人公論 第四十三巻第三号」1958(昭和33)年3月号<br>釈迢空「婦人公論 第四十三巻第四号」1958(昭和33)年4月号<br>堀辰雄「婦人公論 第四十三巻第七号」1958(昭和33)年7月号<br>立原道造「婦人公論 第四十三巻第八号」1958(昭和33)年8月号<br>津村信夫「婦人公論 第四十三巻第九号」1958(昭和33)年9月号<br>山村暮鳥「婦人公論 第四十三巻第十一号」1958(昭和33)年10月号<br>百田宗治「婦人公論 第四十三巻第十二号」1958(昭和33)年11月号<br>千家元麿「婦人公論 第四十三巻第十三号」1958(昭和33)年12月号<br>島崎藤村「婦人公論 第四十三巻第六号」1958(昭和33)年6月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 116,728 字 · 231 页
いまは酒は廃めているが、酒を飲んだ頃の私は酔えば雲烟濛糊の間に、舟をこぎ、眼をつぶりながら睡りにおちるまで杯をはなさなかった。千家は二度目の酒がまわると落ち着かなくなり、皆の帰りの遅いのを私に注意してぶつぶつ言い、次第に一緒に出掛けなかったことに損をしたようにいい出し、じれじれし出した。散歩の詩人達はまだ若かった萩原朔太郎、百田宗治、川路柳虹、佐藤惣之助、白鳥省吾、福田正夫の諸君で、どこかの料理店で酒を飲んでいることに疑いはなかった。私が一人ですねて酒を飲んでいるのではなく、実は千家同様にくたびれ切っていたのだ、すぐに恢復する私の疲労の状態でも、その疲労中は動けなかったのである。
千家元麿は充分に酒が廻ると、起き直って帯を締め直し、やはり君、僕も歩いて来ることにしたよ、そこらに出れば皆のいる所は判るだろうと言い、帽子を手に取ると、部屋を出て行こうと身構えたが、私は言った、そんながたがた肋骨の出た胸をして、一騎当千のサムライ共の真似をすると後で酷い目にあう、静かに酒を飲んでいたらどうかと私は言ったが、千家は酒は飲まないでただ歩くだけなんだよ、君の分の酒は帳場にそう言いつけて置こうかと彼は極り悪げに言ったが、もう一刻もじっとしていられないふうで、せかせかと出掛けて行った。