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わがあいするしじんのでんき
我が愛する詩人の伝記
室生 犀星
北原白秋「婦人公論 第四十三巻第一号」1958(昭和33)年1月号<br>高村光太郎「婦人公論 第四十三巻第二号」1958(昭和33)年2月号<br>萩原朔太郎「婦人公論 第四十三巻第三号」1958(昭和33)年3月号<br>釈迢空「婦人公論 第四十三巻第四号」1958(昭和33)年4月号<br>堀辰雄「婦人公論 第四十三巻第七号」1958(昭和33)年7月号<br>立原道造「婦人公論 第四十三巻第八号」1958(昭和33)年8月号<br>津村信夫「婦人公論 第四十三巻第九号」1958(昭和33)年9月号<br>山村暮鳥「婦人公論 第四十三巻第十一号」1958(昭和33)年10月号<br>百田宗治「婦人公論 第四十三巻第十二号」1958(昭和33)年11月号<br>千家元麿「婦人公論 第四十三巻第十三号」1958(昭和33)年12月号<br>島崎藤村「婦人公論 第四十三巻第六号」1958(昭和33)年6月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 116,728 字 · 231 页
詩の韻律行形はがたがただが、がたがたな中にある感情のすなおさは、ちょっと類のないものを見せている。実に稀なほど生一本の詩人なのだ。
詩というものは長詩の形をとる時の失敗にくらべると、短かい詩とか断章の場合は、見方にも、表現にも尖鋭なつっ走りがあって、この「若き囚人」の場合では、見事な、まるで別人の作品のおもむきを表わしている。
若き囚人
S監獄の煉瓦壁の上から
二十二三の若い囚人が
世間を覗いてゐる
その桃色の半面は美しく燃えてゐる。
彼の心は遠くへ飛んで居る。
私は
私は本を売りにゆく
屈辱に思つて眼に涙が浮ぶ
本屋の主人にそれを見られるのが辛いので
入りにくゝなる、努めて元気になり
自分を装つて入つてゆく、涙をぐつと飲み込んで
私にも
私にも妻子がある
私にも家庭がある
夕暮の天地に満ちる
大安息の中で私はかく思ひ涙ぐむ
この二篇にある善良な性格は、全く詩を書く人でなかったら、何のわざにも従けなかったであろう、ふつうの人間はこんなに正直にものを言うことは出来ない、詩人のなかでも千家のように、大上段の純朴を少しの顧慮なく表わし得る人は、まず彼一人と言ってよいであろう。
千家元麿の周囲には、すばらしい友人達がいて、名利に頓着のない彼を陰から劬った。