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わがあいするしじんのでんき
我が愛する詩人の伝記
室生 犀星
北原白秋「婦人公論 第四十三巻第一号」1958(昭和33)年1月号<br>高村光太郎「婦人公論 第四十三巻第二号」1958(昭和33)年2月号<br>萩原朔太郎「婦人公論 第四十三巻第三号」1958(昭和33)年3月号<br>釈迢空「婦人公論 第四十三巻第四号」1958(昭和33)年4月号<br>堀辰雄「婦人公論 第四十三巻第七号」1958(昭和33)年7月号<br>立原道造「婦人公論 第四十三巻第八号」1958(昭和33)年8月号<br>津村信夫「婦人公論 第四十三巻第九号」1958(昭和33)年9月号<br>山村暮鳥「婦人公論 第四十三巻第十一号」1958(昭和33)年10月号<br>百田宗治「婦人公論 第四十三巻第十二号」1958(昭和33)年11月号<br>千家元麿「婦人公論 第四十三巻第十三号」1958(昭和33)年12月号<br>島崎藤村「婦人公論 第四十三巻第六号」1958(昭和33)年6月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 116,728 字 · 231 页
再びカーテンが引かれたが、用意していた私はこんどは驚かなかった。ツメタイ澄んだ大きくない一重瞼の眼のいろが、私の眼をくぐりぬけたとき彼女は含み声の、上唇で圧迫したような語調でいった。
「たかむらはいまるすでございます。」
「は、いつころおかえりでしょうか。」
女の眼はまたたきもせずに私を見たまま、答えた。
「わかりません。」
私は頭を下げると、カーテンがさっとハリガネの上を、吊り環をきしらせてまた走った。
再度目に訪ねたとき女は顔だけあらわしたが、私はその間際にまた来たという言葉を女の眼によみとって、すぐ、私は彼女の眼に抗議をもうし込むよう、ちょっとした気配を見せてやった、だが、それは受けとられなくて、「たかむらはただいま出かけて居ります。」と彼女はいい、私はやけになり、ああそう、こんな男が来たといって下さいと、私は自分の名前を告げたが、彼女は、正確な返事ではなく、あ、そう、ふんというふうにいって、カーテンをまたさっと引いた。
三度目に訪ねたのは一ヵ月後のある午前中であったが、ツメタイ眼は夫のほかの者を見るときに限られている、夫には忠実でほかの者にはくそくらえという眼付で、やはり追い払われた。